DX・AI
2026.02.08

【担当者向け】AI導入費用の相場は?初期コストから運用保守(MLOps)まで予算計画の立て方

【担当者向け】AI導入費用の相場と予算計画の立て方|初期コストから運用・保守(MLOps)まで徹底解説

【担当者向け】AI導入費用の相場と予算計画の立て方|初期コストから運用・保守(MLOps)まで徹底解説

社内で「AIを導入したい」という話題は出ているものの、具体的な費用感や予算の立て方が分からず、検討が止まっている企業は少なくありません。特に情報システム部門やDX推進担当の方にとって、経営層から「AI導入の予算感を出してほしい」と言われたときに、どこから手を付ければいいか悩みがちです。

この記事では、AI導入費用の全体像と相場感を整理しながら、初期コストから運用・保守(MLOps)までを含めた現実的な予算計画の立て方を、担当者目線で分かりやすく解説します。


目次

1. まず押さえたい:AI導入費用は「スポット」ではなく「ライフサイクル」で考える

AI導入費用を正しく見積もるうえで重要なのは、PoC(試験導入)の費用だけで判断しないことです。AIシステムは、構築して終わりではなく、データやモデルを継続的に改善し続ける必要があります。

AI導入のライフサイクルは、大きく以下の5フェーズに分けられます。

  • ① 企画・要件定義フェーズ:課題整理、ユースケース選定、ROI仮説の検証
  • ② PoC(概念実証)フェーズ:小さく作って効果検証
  • ③ 本番開発・システム化フェーズ:本番環境向けの開発・インフラ構築
  • ④ 運用・保守フェーズ:モニタリング、モデル更新、障害対応
  • ⑤ 改善・横展開フェーズ:精度向上、他部門への展開

多くの企業では、②PoCまでは何とか進むものの、③以降のコストと体制を見誤り、継続運用に失敗するケースがよく見られます。予算計画を立てる際は、「初期費用」だけでなく、「年間の運用保守費用(MLOps)」を必ずセットで見積もることが重要です。


2. AI導入費用の内訳と相場感

ここからは、一般的な企業向けAIプロジェクト(業務効率化や需要予測、問い合わせ対応など)を想定しながら、費用の内訳と相場感を具体的に見ていきます。

2-1. 企画・要件定義にかかる費用

まず最初に発生するのが、企画・要件定義コンサルティングの費用です。ここでは、現状の業務プロセスやデータの状況をヒアリングし、AIで解決できる課題を整理したうえで、ユースケースとKPI、ROIの仮説を立てます。

  • 費用の目安:50万〜300万円程度
  • 期間の目安:1〜3か月

コンサルティング会社やAIベンダーによって料金体系は異なりますが、最初から大規模な要件定義にお金をかけすぎないこともポイントです。まずは1〜2テーマに絞り、PoCにつなげられるレベルで仮説を立てるところまで進めると、全体のコストを抑えやすくなります。

2-2. PoC(概念実証)の費用相場

次に、PoC(Proof of Concept:概念実証)の段階です。ここでは、限定的なデータや業務範囲でAIモデルを試作し、精度や業務インパクトを評価します。

PoCの費用は、対象業務の複雑さやデータ準備の工数によって大きく変わりますが、おおよその相場は以下の通りです。

  • シンプルなPoC:100万〜300万円(既存データを使い、小規模なモデルを構築)
  • 中規模PoC:300万〜800万円(データ前処理やアノテーションが必要)
  • 高度なPoC:800万〜1500万円(画像・音声、独自アルゴリズム、複数システム連携など)

PoCでは、本番運用に耐える品質やセキュリティを求めすぎないことがコツです。あくまで「AIを入れる価値があるかどうか」を判断するフェーズなので、短期間・低コストで検証できるスコープに絞ることで、ムダな投資を抑えられます。

2-3. 本番開発・システム化の費用相場

PoCで一定の成果が見えたら、本番開発・システム化フェーズに進みます。この段階の費用は、PoCの数倍になることが一般的です。理由は、以下のような追加要件が発生するためです。

  • 本番用インフラ(クラウド環境やオンプレミスサーバ)の構築
  • 既存基幹システムや業務アプリとの連携
  • 監査ログや権限管理など、セキュリティ要件への対応
  • 運用監視の仕組みづくり(MLOps基盤の構築)

本番開発の費用相場は、次のようにイメージしておくとよいでしょう。

  • 小規模システム:500万〜1500万円(単一業務の自動化や予測モデルなど)
  • 中規模システム:1500万〜3000万円(複数部署で利用、既存システム連携あり)
  • 大規模システム:3000万〜1億円以上(全社横断、複数AIモデル連携、24/7運用など)

また、生成AI(大規模言語モデル・画像生成モデルなど)を活用する場合は、API利用料(トークン課金)やGPUインフラのコストが別途発生します。こちらは月額数十万〜数百万円規模になるケースもあるため、事前に料金形態を確認しておく必要があります。


3. AI導入にかかる初期コストの具体的な項目

ここからは、担当者として見積もりや社内稟議書を作成するときに押さえておきたい、初期コストの項目をもう少し細かく見ていきます。

3-1. データ収集・整備コスト

AIの性能は、モデルそのもの以上に「データの質」に左右されます。そのため、データ収集・クレンジング・アノテーション(ラベリング)のコストは無視できません。

  • 既存データの整理:CSVやDBに散在するデータの統合、欠損値処理、形式統一
  • 教師データの作成:人手によるラベリング作業(例:画像のタグ付け、文章の分類)
  • 外部データの購入:天候データ、位置情報データ、市場データなど

ラベリング作業を外注する場合、1データあたり数円〜数十円が一般的です。数万〜数十万件のデータを扱うと、合計で数十万〜数百万円規模になることもあります。

3-2. モデル開発・評価コスト

データが準備できたら、AIモデルの開発・学習・評価を行います。ここでは、データサイエンティストや機械学習エンジニアの工数が主なコスト要因です。

  • 特徴量設計・アルゴリズム選定
  • 学習・ハイパーパラメータチューニング
  • 評価指標(精度、再現率、AUCなど)に基づく検証

外部ベンダーに委託する場合、1人月100万〜200万円前後が相場感です。PoCで2〜3人×2〜3か月、本番開発で3〜5人×3〜6か月程度を想定すると、人件費だけで数百万円〜数千万円規模になることも珍しくありません。

3-3. インフラ構築・ミドルウェア導入コスト

オンプレミスかクラウドかによってもコスト構造は変わりますが、近年はクラウド(AWS、Azure、GCPなど)を前提としたAIインフラが主流です。

  • 初期セットアップ費用:環境設計、ネットワーク設定、セキュリティ設定など(50万〜300万円程度)
  • GPUサーバ調達:オンプレの場合は1台数百万円〜(減価償却を考慮)
  • クラウド利用開始:環境構築の工数+初期クレジット

クラウドの場合、初期費用を抑えつつ始められる一方で、ランニングコスト(毎月の利用料)が継続的に発生するため、次に解説する運用コストと合わせて見積もることが重要です。


4. 見落としがちな「運用・保守(MLOps)」コストとは

AI導入で特に見落とされやすいのが、運用・保守(MLOps)コストです。MLOpsとは、機械学習モデルを本番環境で安定的に運用し、継続的に改善していくための仕組みやプロセスを指します。

AIモデルは一度作って終わりではなく、データの変化や業務の変化に応じて定期的なメンテナンスが必須です。ここを軽視すると、リリース直後は高精度だったモデルも、数か月〜1年で急速に性能劣化してしまう「モデル劣化(データドリフト)」が起こります。

4-1. MLOpsで必要となる主な作業

運用・保守フェーズでは、例えば次のような作業が発生します。

  • モデルモニタリング:予測精度やエラー率の継続的な監視、アラート設計
  • データドリフト検知:入力データの分布変化を検知し、再学習のタイミングを判断
  • 定期的な再学習:新しいデータを取り込んだモデル再学習・再デプロイ
  • 障害対応・SLA遵守:システム障害やレスポンス低下時の原因解析・復旧
  • セキュリティ・コンプライアンス対応:アクセス制御、ログ管理、監査対応

これらを人手とスクリプトだけで回そうとすると、担当者の属人化やヒューマンエラーのリスクが高まり、長期的にはコスト増につながります。そのため近年は、MLOpsプラットフォーム(MLflow、Kubeflow、SageMaker、Vertex AIなど)を活用した運用自動化が主流になりつつあります。

4-2. 運用保守(MLOps)費用の相場感

AIシステムの運用保守費用は、一般的な業務システムと同様に、「初期構築費用の15〜25%/年」を目安にするケースが多く見られます。

  • 初期構築費用1000万円の場合:年間150万〜250万円程度
  • 初期構築費用3000万円の場合:年間450万〜750万円程度

ただしAIの場合、モデルの再学習やABテスト、精度改善のための追加開発が含まれることも多いため、運用保守費用が初期費用の30%以上になるケースも珍しくありません。

担当者としては、「初期構築費用+3〜5年分の運用保守費用」をセットで提示すると、経営層に対してより現実的な投資計画を示すことができます。


5. クラウド利用料・API利用料の見積もりポイント

AI導入後のランニングコストとして、クラウド利用料・API利用料も無視できません。特に、生成AIや外部AIサービスを利用する場合は、利用量に応じた従量課金が中心となります。

5-1. クラウドインフラの費用構成

クラウドインフラの費用は、主に以下の要素で決まります。

  • コンピューティング:CPU/GPUインスタンスの稼働時間
  • ストレージ:データ保存容量(オブジェクトストレージ、DBなど)
  • ネットワーク:データ転送量(外部との通信量)
  • マネージドサービス:データベース、キューニング、MLOpsサービスなどの利用料

小〜中規模のAIシステムであれば、月額10万〜50万円程度からスタートすることが多く、利用規模が大きくなると月額100万〜数百万円まで膨らむ場合もあります。

5-2. 生成AI・外部APIの利用料

ChatGPTや各種LLM、画像生成APIなど、外部のAI APIを利用する場合は、トークン数(文字数)やリクエスト数に応じた従量課金が一般的です。

  • 社内問い合わせチャットボット:月数万〜数十万円
  • カスタマーサポート対応の自動化:月数十万〜数百万円

これらは、利用ユーザー数×1人あたりの平均利用回数から概算を出せるため、要件定義段階で利用シナリオをできるだけ具体化しておくと、見積もりの精度が上がります。


6. 社内稟議が通りやすくなるAI導入の予算計画の立て方

ここまででAI導入費用の相場感と内訳を整理してきました。次に、担当者として実際に予算計画を立てる際のステップを解説します。

6-1. ステップ1:ユースケースとROI仮説を明確にする

最初にやるべきことは、「どの業務を、どれくらい良くしたいのか」をできるだけ具体的にすることです。

  • 例:問い合わせ対応時間を30%削減したい
  • 例:需要予測の精度を20%改善し、在庫削減につなげたい

これに対して、削減できる工数やコスト、期待できる売上増加を試算し、ROI(投資対効果)の仮説を立てます。ここで完璧な数字を出す必要はなく、投資のオーダー感が伝われば十分です。

6-2. ステップ2:PoC予算と本番想定予算を分けて提示する

AI導入は、いきなり本番開発の予算をまとめて取るよりも、「PoC予算」と「本番開発+運用予算」を分けて提示した方が、稟議が通りやすくなります。

  • PoCフェーズ:100万〜500万円程度で、効果検証に必要な最小限の範囲を実施
  • 本番フェーズ:PoC結果を踏まえ、必要性が確認できた案件に絞って投資

このようにフェーズを分けることで、「一度に大金を投じるリスク」を抑えながら、小さく始めて成功事例を積み上げる戦略をとることができます。

6-3. ステップ3:3〜5年スパンでTCO(総所有コスト)を試算する

経営層は、単年度の開発費だけでなく、3〜5年スパンでの総所有コスト(TCO)を重視する傾向があります。AI導入の場合、次のような費用を合算して試算するとよいでしょう。

  • 初期のコンサル・要件定義費用
  • PoC費用
  • 本番開発・システム化費用
  • 運用保守(MLOps)費用 × 3〜5年分
  • クラウド・APIのランニングコスト × 3〜5年分

これらを合計したうえで、同期間に見込めるコスト削減・売上増加と比較し、「3年で投資回収可能」「5年で〇%のROI」などの形で示すと、説得力が高まります。

6-4. ステップ4:社内リソースと外部委託のバランスを設計する

AI導入には、データサイエンス/MLエンジニアリング/業務知識/ITインフラなど、多様なスキルが必要です。すべてを社内で賄おうとすると、採用や育成コストが膨らみ、プロジェクトが進まなくなるリスクがあります。

現実的には、以下のような「ハイブリッド体制」を検討する企業が増えています。

  • コアとなる業務要件・データ理解:社内担当(事業部門+情報システム部門)
  • モデル開発・MLOps基盤構築:外部ベンダーやパートナー
  • 日常運用・一次障害対応:社内+外部のサポート契約

このように役割分担を明確にしたうえで、どこにどれくらいのコストをかけるかを整理しておくと、予算計画の妥当性を説明しやすくなります。


7. AI導入費用を最適化する3つのポイント

最後に、限られた予算の中でAI導入費用を最適化するためのポイントを3つ紹介します。

7-1. 既存クラウドサービス・AIプラットフォームを最大限活用する

ゼロからフルスクラッチでAI基盤を構築すると、時間もコストも膨らみがちです。近年は、主要クラウドベンダーが学習〜デプロイ〜MLOpsまで一通り揃ったサービスを提供しているため、これらを前提に設計することで、初期費用と運用コストを抑えやすくなります。

7-2. 汎用モデル・生成AIの活用で「作る範囲」を減らす

自然言語処理や画像認識などの分野では、既に高性能な汎用モデルが存在します。これらをファインチューニングして活用したり、生成AIをAPIとして組み込んだりすることで、モデル開発の工数を大幅に削減できます。

ただし、外部API依存によるランニングコスト増やデータガバナンス上の制約もあるため、自社データの機密性や中長期のコスト構造を踏まえて採用可否を判断する必要があります。

7-3. スモールスタートとナレッジ蓄積を徹底する

1つの案件に多額の予算を投じるよりも、小規模なプロジェクトを複数走らせ、成功パターンと失敗パターンのナレッジを蓄積した方が、結果的に投資効率が高くなります。

そのためには、

  • 全社DX戦略の中でAI導入ロードマップを描く
  • 各プロジェクトのKPIとコストを共通のフォーマットで管理する
  • 成功事例を社内で共有し、横展開しやすい型を作る

といった仕組みづくりが重要です。


まとめ:AI導入費用は「初期+運用(MLOps)」でセット検討を

AI導入の費用相場は、ユースケースや規模、データの状況によって大きく変動しますが、一般的な企業向けプロジェクトのイメージとしては、以下のように整理できます。

  • 企画・要件定義:50万〜300万円
  • PoC(概念実証):100万〜1500万円
  • 本番開発・システム化:500万〜1億円以上
  • 運用・保守(MLOps):初期費用の15〜30%/年
  • クラウド・API利用料:月額10万〜数百万円

担当者として予算計画を立てる際は、

  • PoCと本番開発の予算を分けて考える
  • 3〜5年スパンでのTCOとROIをセットで示す
  • 運用・保守(MLOps)とクラウド利用料を必ず織り込む

といったポイントを押さえておくことで、現実的で説得力のあるAI導入計画を作成できるようになります。

自社の状況に応じたより具体的な費用感を知りたい場合は、1〜2件のユースケースを仮設定したうえで、複数のAIベンダーから概算見積もりを取得するのがおすすめです。その際、本記事で紹介した「費用項目」と「ライフサイクル」の視点を活用いただければ、見積もりの妥当性を判断しやすくなるはずです。

AI導入は一見ハードルが高く見えますが、フェーズを分けて小さく始め、運用・保守(MLOps)までを見据えた計画を立てれば、着実に成果を積み上げていくことが可能です。次の一歩として、まずは自社にとっての優先ユースケースの洗い出しから始めてみてください。

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